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執筆者の写真樋野 興夫先生

第116回 『医療者の人材育成』 〜「いたわり」の理解 〜

 『第6回 音読会 ~ 武士道 新渡戸稲造 ~』 に赴いた(新渡戸記念中野総合病院に於いて)。 「樋野興夫 新渡戸稲造記念センター長を囲んで、新渡戸稲造 先生をより深く理解するために『武士道』の読書会(輪読会)を開催いたします。」と謳われている(添付)。 今回は、第6章『礼』であった。

『医療者との読書会の目的』の5ヶ条は、

(1)「明晰な病理学的診断」

(2)「冷静な外科的処置」

(3)「知的な内科的診療」

(4)「人間力のある神経内科的ケア」

(5)「人間の身体に起こることは、人間社会でも起こる=がん哲学」

であろう。

人間の身体と臓器、組織、細胞の役割分担と、お互いの非連続性の中の連続性、そして、傷害時における全体的な「いたわり」の理解は、世界、国家、民族、人間の在り方への 深い洞察へと誘うのであろう。 国手とは「国を医する名手の意」、名医また医師の敬称とあり、「医師は直接、間接に、国家の命運を担うと思うべし」とのことである。 医師の地上的使命と同時に「日本の傷を医す者」(矢内原忠雄: 1945年12月23日の講演)が蘇った。 1860年代遣米使節団 (勝海舟らがいた) が、ニューヨークのブロードウエイを行進した。 彼らの行進を見物した詩人ホイットマンは、印象を「考え深げな黙想と真摯な魂と輝く目」と表現している。 この風貌こそ、現代に求められる「医療者の風貌」でなかろうか。 まさに、「時代を動かすリーダーの清々しい胆力」としての「人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動」(南原繁著の「新渡戸稲造先生」より)である。 今回の「音読会」で、以前、訪問看護師から送られて来た『相関図』(添付)が、鮮明に思い出された。

『医療者の人材育成』の3ヶ条

(1)俯瞰的に病気の理を理解し「理念を持って現実に向かい、現実の中に理念」を問う人材の育成

(2)複眼の思考を持ち、視野狭窄にならず、教養を深め、時代を読む「具眼の士」の種蒔き

(3)学には限りないことをよく知っていて、新しいことにも、自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力する。

これこそ、病院経営にとって、「間断なき努力は進歩の要件」(新渡戸稲造)であろう。



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