筆者は、2007年から『武士道』(新渡戸稲造著、矢内原忠雄訳、岩波文庫1938年発行)と『代表的日本人』(内村鑑三著、鈴木範久訳、岩波文庫1995年発行)の音読会を交互に行っている。 この2つは、やや文語体で難しいので、音読担当者は、一ヶ月前に決めている。 音読担当にとっては、漢字の学習の時にもなる。 これは、人生の良き想い出ともなろう! 筆者は、大学生の授業でも、時々、教科書の音読を進めている。 漢字を人前で、きちっと、正しく読むことは、大切であり、教育にとっても重要である。
筆者は、順天堂大学医学部病理・腫瘍学 教授時代、3年生、4年生の医学生と数名で、教授室で『がん哲学勉強会』を行ったものである。 『私伝・吉田富三 癌細胞はこう語った』(吉田直哉著 文藝春秋発行)の読書会である(添付)。 看護の学生も加わり第7章「国語政策への挑戦」を学んだことが、鮮明に思い出される。 お茶を飲みながら、大いに会話が弾んだ。 まさに、「良書を読み、有益な話を聞き、心の蔵を豊かにする」(新渡戸稲造)の実践である! 「漢字の学習は、子供の軟かい脳味噌には 重荷に過ぎて 可哀想だといふことは、考えるのは面倒で、邪魔くさい、子供に考える道を学習させるのは重荷で 可哀想だということと、実は同じことなのである。 それは、考えることをやめて 頭を空虚し、衝動によって行動する人間を作ることに通じるのである。」という『吉田富三』の言葉は静思に値する。 国語審議会での「国語は、漢字仮名交りを以て、その表記の正則とする」との「吉田提案」の箇所である。 これによって、明治以来の「ローマ字、カナモジによる国語表音化には終止符」が打たれた。 「病理学者:吉田富三 (1903-1973) 」の「国語問題」に果たした役割は、実に大きい。 国語審議会での吉田富三の気迫・気概・胆力ある発言は、大いなる学びである。 第8章は、「医療制度への挑戦」である。 「漢字のもつ映像的機能を重視して分析した」癌病理学者:吉田富三の提案は『「国語改革」の怒濤を、急激に減衰させることに成功した』、「深みを求める熟練した者の説得力」の故でもあろう。 状況に左右されやすい現代の世相の処方箋にとっても大切である。 筆者は、吉田富三は「自分のオリジナルで流行をつくれ」&「事に当たっては、考え抜いて日本の持つパワーを充分に発揮して大きな仕事」を された人物と、若き日に、学んだものである。
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