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執筆者の写真樋野 興夫先生

第148回 人生の意義と目的の『静思』 〜 「多様性のある制御(Dramatype) 〜

 2021年5月28日 東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 がんエンドオブライフケア看護学(山﨑智子 先生 主催)で、大学院生のZoom授業(13:00-16:00)に赴いた。 『がん病理学』、『がん哲学』、『がん哲学外来』について講義した。 『がん病理学』は {「がん」に関しての学問で、 『形態』、 『起源』、 『進展』などを 追求する学問分野である。 当然 がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。 がん病理学者が『がん』 を どの様に考えるかは、とても大切なことである。 なぜなら『がん』に対する概念が 世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも時には 決定するからである。 「がん」の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では 人生の意義と目的の『静思』 へとも導くものと考える。 これこそ、『がん病理学者の社会貢献』 である。}と述べた。 そして、『発がんの連盟的首位性 〜 Genotype, Phenotype, Dramatype 〜』:「初期条件がある範囲にあると、初期の変異が 経時的変化とともに 分子の相互作用によって、様々に拡大し、将来予測が不可能になる。 これは 初期のわずかの変異で 大きな効果が出ることを意味する。 非平衡状態にあり 外部と相互作用する開かれた複雑系では、初期状態(Genotype)が同じでも、外部から、意識的に適時に介入すれば、ある特異点(Phenotype)で分岐し 多様性のある制御(Dramatype)が可能になるはずである。 病気はDramatypeなる故に、予防、治療が成立する。」と説明した。


『がん哲学』は、顕微鏡でみた癌細胞の映像に裏打ちされた『哲学』であり、『「がん細胞で起こることは 人間社会でも起こる」=がん哲学』と語った。

『がん哲学外来』は、母を亡くして 悩んでいるクララに対して、勝海舟の奥さん(たみ)の言葉;『悲しい時には 私達の所へいらっしゃい、一緒に泣きましょう、そしてあなたが 仕合せな時には 一緒に笑いましょう。 さあ勇気をお出しなさい、—— これから先の長い年月のことは考えず、今日という日以外には 日がないと思って ただ毎日をお過ごしなさい』は、「訪れる人を 温かく迎い」入れる『がん哲学外来』の心得であると伝えた。


「あなたが善を行うと、利己的な目的で それをしたといわれるでしょう。 気にすることなく、やり遂げなさい。 目的を達しようとするとき、邪魔立てをする人に出会うでしょう。 気にすることなく、やり遂げなさい。」(マザー・テレサ)と、また、『「最も剛毅なる者は 最も柔和なる者であり、愛ある者は 勇敢なる者である」とは、「高き自由の精神」を持って医療に従事する者への普遍的な真理であろう。「他人の苦痛に対する思いやり」』は、医学、医療の根本である。 看護師の3ヶ条は 『 1)「役割意識 & 使命感」 2)「ユーモアに溢れ、心優しく、俯瞰的な大局観ある人物」 3)「人間的な責任で、手をさしのべ、患者と温かい人間としての関係」』であり、「どんな種よりも小さいのですが、成長すると、どの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て、その枝に巣を作るほどの木になります」と、これが『がん哲学 & がん哲学外来』の原点であると! 多数の真摯な質問が多数あり、大いに感動した。

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