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執筆者の写真樋野 興夫先生

第175回 「新鮮なインパクトを与える」 〜 「教育の使命」〜

 2021年12月2日 ルーテル学院大学 現代生命科学IIの『病理学』の講義に赴いた。 今回は、後期5回目の授業で、前半(14:30〜16:10)は、「教科書」の『「免疫とアレルギー」:生体における免疫系の役割、免疫系のしくみと働き、アレルギー』、休憩し、後半(16:20〜18:00)は、『自己免疫疾患、免疫不全症、移植免疫、がんと免疫、「感染症」:感染症とは、ヒトの体内に共生する微生物、病原微生物の種類とその特徴、感染様式・経路および潜伏期間、感染防御能(感染免疫)、感染臓器と病原菌、AIDSと日和見感染症』を音読しながら進めた。 教科書を音読する学生の姿勢と真摯な質問には、大いに感動した。 将来、臨床心理士を目指す学生も受講されていた。


『病理学の父』と呼ばれるのは、ドイツの病理学者、ウィルヒョウ(1821-1902)である。 ウィルヒョウの下で学んだ山極勝三郎(1863-1930)は,『日本病理学の父」』と呼ばれる。 そして山極勝三郎に続く人物が吉田富三(1903-1973)である。 吉田富三は病理学という専門分野を極め、さらにまた、医療制度や国語政策にも取り組み、重要な提言を行っている。 吉田富三は、「人体の中で起こっていることは、社会と連動している」といい「がん細胞に起こることは 必ず人間社会にも起こる」といっている。 ここに、『がん哲学』の源流がある。 筆者は、後世に生まれた病理学者として、大いなる喜びである。


「人生は開いた扇」のようである。 人生における出会いは、出会った時に受ける影響だけに留まらず、20~30年後に影響してくることがある。 良い出会いであっても環境が整わないと大成しない。 正常細胞は、「使命を自覚して任務を確実に果たす。 自己制御と犠牲の上で 生きている細胞」であるが、がん細胞は「この目標を見失って、増殖することに長けた細胞に変貌している」ということである。「古き歴史と日新の科学」を踏まえて、次世代の新しい精神性として改めて問い直す時代到来である。 人間の尊厳に徹した医学・医療の在り方を考え、「学問的、科学的な責任」と「人間的な責任」で、「新鮮なインパクトを与える」ことが「教育の使命」であろう。

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