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第334回 『がん哲学』の原点 〜 コミュニケーションの意義 〜

執筆者の写真: 樋野 興夫先生樋野 興夫先生

 2024年2月14日筆者は 病理組織診断業務に赴いた。 顕微鏡を見て病気を診断する『丁寧な観察力』の実践である(添付)。 誤診は許されない厳粛な場である。

 

最近、【『がん哲学』とは どういうものか教えていただけますか?】&【『がん』と『哲学』という一見調和しそうにない点に着眼したのはどうしてですか?】の質問を受ける機会が多い。

 

『がん細胞の病理』(体の中での問題)と『人間社会の病理』(児童虐待、家庭内暴力、自殺やうつ病の問題)の類似性が、2001年の『がん哲学』の提唱の原点である。 つまり、【がん病理の研究を進めるなかで、正常細胞が がん化するメカニズムと、一人の人間が 社会の中で不良息子・娘になるのかは似ている】と感じたからである(添付)。

 

人間社会で不良と言われる例えば若い少年がいると、その周りにいる少年たちも感化されて不良になる傾向はある。 しかし、その不良の子は 寂しかったり傷ついていたりして、周りの多くの人たちが 手を差し伸べ包み込むことで、その子は更生へ向かうことを体験する。

 

がん細胞も一緒で、細胞間のコミュニケーション(cell-cell communication)がしっかりとれて、なんとか正常な細胞でがん細胞を守っていくことで、たとえ、がんを防ぐことはできなくても、選択的に大きくならないのでは、と考えたのである。『予防より心構え』(添付)が大切であろう。

 

『がんは生物学の法則』、『哲学は人間学の法則』、そして これらが合わさったものが『がん哲学』である。 がんに罹患すると、患者やその家族は初めて死というものを意識します。 同時に、これまでの人生の意味や これからの生き方、そして残された時間をどう過ごすか といった問いに真剣に向き合います。 そのときに生じる不安や自責の念に対して、『哲学』が心の支えとなろう。【『病気』であっても『病人』ではない】社会の構築の時代である。



 
 
 

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