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執筆者の写真樋野 興夫先生

第93回 「実在と理想の連続」 〜有為の人物に接するほどに 練磨され、より進展する〜

 コロナショックの自粛の日々である。 新渡戸稲造(1862-1933)は 札幌農学校時代(18歳頃)、鬱病的に陥り カーライル(1795-1881)の『衣装哲学』に出会い、「渇者の飲を求めるごとき 勢いで読んで 慰藉を得た」と言われる。 カーライルは、「実在と理想の連続」、つまり リアルの中に アイデアルがあると 考えていた。 これは 新渡戸稲造を師とする 南原繁(1889-1974)の「理念をもって 現実に向かい 現実の中に 理念を問う知性のあり方」(理想主義的現実主義)に繋がる。カーライルの「師匠」はゲーテ(1749-1832)であり、ゲーテー> カーライルー> 新渡戸稲造―> 南原繁、まさに歴史の動脈は 人物を通して流れている。 その一貫した流れは「その品行の動機を見ないと 決して その人の真価が分からぬ」、「門構えが立派で 奥が甚だ汚い」ことを鋭く指摘し、「才子的に ヒョコヒョコして 世の中を 渡れるものでない。真面目でなければならぬ」と 教えるのである。 クロムウェル(1599-1658)の復権をしたのも カーライルである とのことである。「人は 有為の人物に接するほどに 練磨され、より進展するものである」。「他人を 尊敬することから 生じる謙譲・慇懃の心は 礼の根本をなす」は 教育の原点ではなかろうか!


2020年は、新渡戸稲造の国際連盟事務局事務次長(1920年〜1926年)就任100周年である。 当時『ジュネーブの輝ける星』とうたわれた。『五千円札の顔』で知られる日本が誇る国際人でもある。

新渡戸稲造の多様性には、下記が指摘される。

(1)「伝統」と「進歩」を止揚した

(2)忍耐強い芸術的な「外交哲学」

(3)日本における 民主主義思想の教育の先覚者・近代的な女性教育を展開した

(4)危険な、困難な時代にあって、公義に殉ずる気概の「実例と実行」を示した

癌の本態解明に道を切り開いた日本が誇る癌病理学者で癌研の所長でもあった吉田富三(1903-1973)は、癌研究のみにとどまらず、医療制度の改革や、戦後の国語政策への提言など、幅広い活動を繰り広げた。 まさに「癌哲学者」である。「新渡戸稲造の学び」、「吉田富三の学び」が、今の筆者へと導いた。



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