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執筆者の写真樋野 興夫先生

第99回 「賢明なる配慮と胆力と覚悟」〜「流れる水はくさらない」〜

 昨日、「東京医療生活協同組合 新渡戸記念中野総合病院」での 読書会「新渡戸稲造 著『武士道』(矢内原忠雄訳)」に赴いた。 「東京医療生活協同組合 新渡戸記念中野総合病院」は、新渡戸稲造(1862-1933) ・ 賀川豊彦(1888- 1960)らにより1932年「東京医療利用組合」として創立された、日本で最初の組合病院である。「東京医療利用組合設立趣意書」には「疾病に対する治療は、人間の最も尊貴なる生命の保護として、貧富、高下、都鄙の別なく享受せられなければならぬ」、「個人としての医師の及ばない経済上の問題を解決し、更に医療上に於ても、各専門医の協力と綜合による組織的医療を行い得ること、進んで治療の根本問題であるところの組合員の保健即ち予防医学まで誠意を以て徹底的な貢献を為し得る点に於て、特色を持つものであります。」と謳われている。「高度の医療を 全ての人々が 安心して受けられる」は、人類の永遠の課題である。「流れる水はくさらない」(新渡戸稲造)の心得である。

新渡戸稲造の ゆかりの「新渡戸記念中野総合病院」で、新渡戸稲造 著『武士道』(矢内原忠雄訳)の読書会が開催されたことは、歴史的快挙であろう! 理事長 & 病院長、スタッフの皆様の「賢明なる配慮と胆力と覚悟」には、ただただ 感服である。 今回の箇所は、第2章『武士道の淵源』で、担当は、事務局長 と 看護部長であった。真摯な朗読には、感動した。有意義な 充実したデスカッションの時であった。「いろいろの意見を 努めて聴く」(新渡戸稲造)ことは、医療人にとっては、重要なことであろう! 「理念を持って 現実に向かい、現実の中に 理念を問う 医療人の育成」の実践の場 でもある。

筆者の順天堂大学 定年退職の2019年に、新渡戸稲造記念センターが開設され、筆者は、新渡戸稲造記念センター長として招かれた。 不思議な出会いである。 そして 毎週1回『がん哲学外来』を担当することになった。「人生から 期待されている」、「もしかすると この時のため かもしれない。」(エステル記 4章14節)の実感の日々でもある。『種を蒔く人になりなさい』(ルカの福音書 8章4~15節) の訓練ではなかろうか! これこそ、『われ21世紀の新渡戸とならん』(初版2003年、新訂版2018年)の夢の実現であろうか!



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